執筆者:後藤ようこ
後藤 ようこ取締役副社長
スキル
- ランディング(執筆)
- ディレクション
- コンサルティング
大学病院で看護師として働いたのち、看護教員の資格を取得し看護教育に携わりました。
現在は株式会社ノーブランドの取締役としてウェブサイトやパンフレット制作のディレクションを担当しています。(ディレクションは20年以上の経験を持ちます。)
また、医療系の出版社で医療記事の連載をした経験があります。医療記事をはじめ、販促物に掲載する原稿作成(ライティング)も担当しています。医療知識を持っているため、医療、介護、福祉関係のお客様が多いです
これまで学んできた、教育学、人間関係論、心理学などの知識を活かし、販売促進に関わるコンサルティングも行っています。
<記事の概要>
自社の商品やサービスを売り込むためには、徹底的に『買い手』目線で魅力をアピールすることが重要です。できるだけ買い手目線で魅力をアピールするための売り方のコツについて解説しました。目 次
1『他社製品よりも優れているので、もっと売れるはず』は間違い
こんなお悩みはありませんか?
そんな弊社は、数多くの業種の販促に携わってまいりました。その経験とノウハウを元に、売上アップのコツについて以下の記事を書いています。
皆さんは、自社の商品・サービスを『お客様視点で売り込む』事をしていますか?
『お客様視点で売り込む』ことは、販売戦略上とても大切なことです。
しかし、意外にも、その視点が欠けてしまっている場面に出くわします。
それでは、魅力の絞り込みとは具体的にどういうことでしょう。
これまで、パンフレットやカタログ制作を通じて、様々な業種の方々との関わりを通じて実感した、魅力の絞り込みについて解説していきます。
お客様を『買い手』、販売者を『売り手』として説明していきます。
売り手は自社の商品やサービスに自信を持って販売をしています。
「他社に比べて性能が良い」
「他社よりも安い」
など、他社と比較しても、充分自信があると考え販売していることでしょう。
ところが時に、この『売り手』の売り込み方法が曖昧で、『買い手』の価値観とずれていたりするケースがあります。また、他に魅力的な売りがあるにもかかわらず、『売り手』の社長の頭の中にだけあり表現されていないケースもあります。
それでは、具体的な事例で解説していきましょう。
かつて、住宅用建築資材を製造販売している会社さんとお取引をしていた事がありました。
その会社はメーカーさんですので、製品の事は知り尽くしているということは言うまでもありません。
その会社は、住宅内のホルムアルデヒドやタバコに含まれる有害物質などを吸着する壁材の販売がメイン商材でした。DIYで貼れる壁材なのでホームセンターなどで販売しているものでしたので、ターゲットは一般消費者となります。
当然のことながら、社長さんは自社の商品に絶対的な自信を持っており、『他社の類似商品には負けない。』と自信満々に思っていました。
しかし残念なことに、市場シェアは1位に圧倒的な差を付けられ2位に甘んじていました。いつも、『うちの商品の方が1位の会社の商品よりも優れている。もっともっと売れても良いはず。』と語っていました。
確かに社長さんの主張は間違っていません。
他社よりも優れていれば、もっと売れるはずなのです。
そこで、社長さんに、他社の商品と比較して何が優れているのかを聞いてみることに。
すると、社長さんは待ってましたとばかりに、細かな数字がびっしりと書かれた書類を持ち出してきました。その書類は、信用のおける検査機関で自社と他社の商品を性能比較した検査結果でした。
「ほらここ、この数字を比べて見てよ。うちの商品の方が、3ppm優れているんだよ!」
この3ppmというのは有害物質を吸着する能力のことです。
当然、有害物質の吸着能力が高い方が商品として優れています。
しかし、その3ppmの差は『買い手』から見た場合、あまりにも想像しにくい魅力です。
時に、 これが、売り手と買い手の商品に対する魅力のギャップとして現れてしまいます。
2売込み方がそのまま売上につながる
販売する商品やサービスが、他社よりも優れていることはとても重要です。
しかし、その他社との違いが『買い手』にとっての魅力として伝わらなければ意味がありません。
この社長さんのケースは、決して特殊なケースではありません。
特に、物作りと真剣に向き合えば向き合うほど、作り手の「より高性能な物を作りたい、より高性能な物を売りたい」という思いは強くなります。この性能の違いが『買い手』にとっての魅力として伝わればいいのですが、時に『買い手』が求めるものとズレが生じてしまいます。
前述した社長さんの商品は住宅用DIY壁材です。
性能の良い商品なので、健康に対して意識の高い人が積極的に求める商品です。しかし、一般消費者にとっては3ppmの違いがどれだけ良いことかピンとこない可能性があります。
それに対し、シェア1位の会社は、性能で少し劣る分、細かな検査結果の数字などでアピールはしていません。わざわざ自社にとって不利な土俵では戦いません。その代わり「簡単・導入し易い・安い」と、わかりやすい言葉をうたい文句にしていました。
この「3ppmの差」と「簡単・使いやすい・安い」の二つが、買い手の心にどのように響いたかが、そのままシェア獲得の大きな開きとなって現れてしまうことがあります。
つまり、『買い手』が求めている魅力を、『売り手』が的確に定義してアピールできるかが商品やサービスの売上を決めるのです。
3「感覚」で相手の興味を引き「理屈」で納得させる。
それでは、『買い手』が求めているニーズや価値観(判断基準)とはなんでしょうか?
住宅用壁材の製造販売の会社の場合、他社の商品と比較して有利で魅力的と思っていた性能が、残念ながら『買い手』の価値観と少しズレていました。
では、この住宅用壁材の場合、多くの『買い手』が求めている価値は何だったのでしょうか。
それを考えるためには、『買い手』の立場になって考えることです
こんなことは、当たり前のように思えますが、この当たり前なことが、実は奥が深く、あまり出来ていないケースがとても多いのです。
最初から、『売り手』と『買い手』と分けて書いていますが、実は、『売り手』も仕事を離れれば『買い手』に変わります。なのに、仕事で『売り手』側にまわると、『買い手』としての視点を忘れてしまうのです。
「理屈」とは根拠に基づいた性能であったり、細かな機能であったり、こだわりです。
それに対して「感覚」とは、見た目の印象であったり、手触りだったり抽象的な説明です。
テレビCMやタレントを使った広告などは、決して「理屈」などは言っていません。
「なんとなく良さそう」「なんだかオシャレ」「あのタレントが出てるから」など、商品やサービスに対する「感覚」をアピールしているのです。
まずは、「感覚」で相手の興味を引き「理屈」で納得させる。これが有効な手順です。
ただし、いくら「感覚」が重要といっても大企業のように、テレビCMやタレントを使った「イメージ戦略」「ブランド戦略」をするべきと言っているわけではありません。
私たちのような中小零細企業や店舗が、「イメージ戦略」「ブランド戦略」を行うことは、まったくの無駄。これらは潤沢な資金と、長い時間をかけて行うものだからです。
中小零細企業や店舗がやるべきことは、そんな難しいことではなく、自社の商品やサービスを「感覚として伝わるような言葉で正確に伝える」ことです。
4魅力的に伝えなければまったく意味がない。
それでは、感覚として伝える魅力の決め方について考えていきます。自社の商品や・サービスの魅力的な価値を、どのように見いだして定義するのかを考えていきましょう。
方法については前にも触れましたが、「買い手の立場になって考える」ことしかありません。
『買い手』が感覚的に興味を持ってくれる言葉を考えることが重要です。
自社の住宅用壁材が他社製品よりも3ppm優れているのであれば、3ppmの差を主婦でもわかりやすく、そして「感覚的」に魅力的に伝わる言葉に置き換える必要があります。
この文章のポイントは、3ppmなどの専門的な「理屈」ではなく、「約20%」「タバコのニコチン約2箱分」「ペットの臭い約犬1匹分」など、具体的にイメージできる表現に置き換え、「感覚」として性能の差を伝えるのが良いでしょう。さらに、安易にその場の低料金だけで他社の商品を選んでしまうことへの警告もしています。
ただし、この書き方をする場合は、注釈で良いので、約20%の科学的根拠とした数字は記載する必要があります。小さめでも良いのですが、約20%の根拠を知りたいと思った時の情報の受け皿は必要です。
一方、性能では若干劣るけれども、シェアNo.1を誇る他社では「簡単・安い」を売りにしています。
仮に私がこの会社の商品を宣伝するとしたら、以下の様なうたい文句を考えます。
つまり、売りたい商品やサービスが他社製品と性能が劣っていたとしても、伝え方次第でユーザーの心に刺さる文章を揃えることができます。
また商品やサービス自体がどれだけ魅力的であっても、魅力的に伝えなければ売り上げアップにつながりにくくなります。
5魅力を見つけるための具体的な方法。
最後に、皆様が自社の商品やサービスに対して魅力的な定義が出来るように、より具体的に話をしたいと思いポイントにまとめてみました。ぜひ、参考にして考えてみてください。
ポイント1:一般的でない言葉、専門用語は使わない。
販売する対象が専門家の場合は良いのですが、一般人に販売する商品やサービスの場合は、難しい言葉はいけません。
売り手が当たり前に使っている言葉でも、買い手は知らない言葉だった・・・という事が多々あります。
買い手の視点まで目線を下げて言葉を選びましょう。
また、カタカナや英語も注意が必要です。
ソリューション、イノベーション、アイデンティティなど、どれだけの人がその意味を正確に理解できているでしょうか。
この様な抽象的であいまいな表現をしても、混乱をあたえるだけですので、他の平易な言葉に置き換えましょう。
ポイント2:出来るだけ身近な数字に置き換える。
数字には不思議な力があります。
それは理解のしやすさと説得力です。
百の言葉を使って説明するよりも、一つの数字の方が理解させ納得させることができます。
例えば、ビジネス書のタイトルには、そのことを意識して数字を入れている本が沢山あります。実際に、多くの本の中から思わず数字の入ったタイトルの本を手に取ってしまいませんか。
これは、限られた文字数で、より解りやすく説得力を持たせるための有効な方法だからです。このように数字の力を活かすためには、より効果的な言葉を考えなければなりません。
単純に、「性能が10%アップ」ではなく、「性能が10%アップしたことで、お客様の利便性が倍増」とか、「10%の差があなたの常識を変える」など。 また、前回の例にもあったように「タバコのニコチンなら約2箱分、ペットの臭いなら約犬1匹分」のように、その数字を感覚として伝わる物に置き換えるのも有効です。
※ただし、数字の根拠としての注釈も必ず入れてください。
ポイント3:この商品やサービスによって、買い手がどうなるのかを具体的に伝える。
買い手にとっての最終的な決断は、その商品やサービスを選ぶことによって、どんなに良い事が待っているのかが想像できた時に決まります。
買う選択を迷っている段階では、その商品を購入した後、自分の生活がどの様に変化するを頭の中で想像をしています。
その時に、「明るい未来」「楽しい状況」「便利な生活」「満たされた満足感」などを想像してもらえれば良いのです。 その想像が良い想像になるように、購入することで得られる明るい未来を具体的に示してあげましょう。
「売れる・売れない」は商品やサービスの性能や、営業マンの数、広告の量だけで決まるものではありません。『買い手』のこと考え、わかりやすく、魅力的な説明で、すばらしい未来を想像してもうことこそ重要なのです。
是非、この発想で今一度、自社の商品やサービスを見直してみてください。 きっと、買い手にとって魅力的なアプローチが見つかるはずです。
最後に『経営戦略立案シナリオ』より引用した文章を参考までに掲載しておきます。